ハワード・ハンソンの音楽


交響曲第2番《ロマンティック》
ハワード・ハンソン指揮イーストマン・ロチェスター管弦楽団 
米Mercury 432 008-2(第1交響曲《北欧的》も同時収録)
ハンソン 交響曲1&2 自演盤

イー ストマン音楽学校の元学長で、アメリカ音楽を積極的に演奏した指揮者でもあったハンソンは、7つの交響曲を書いている。いずれも保守的でアクセスしやすい 語法で書かれており、もっと演奏されるべきだと思う。この第2番はそのなかでもとりわけ評価が高い彼の代表作である。作曲者はこの曲について「ロマン主義 の真摯な表現であり、当時繁殖しつつあったシェーンベルグ主義、冷たい音楽へのプロテストである」と述べている。スカンジナヴィアの血を持つハンソンだ が、その響きが北欧の国民楽派と比較されることも多い。なお、第3楽章の冒頭などは、近年の映画音楽を思わせる力強いオーケストレーションで書かれてい る。

 (1998.2.21追加コメント)
一つ作品の難点を述べるとすれば、少ない主題をあまりうまく展開できていないところかもしれない。主題が少なくとも、循環形式のように巧みにまとまってい るのならよいのだが、それがあまりうまくいっていないようだ。したがって各楽章間のコントラストが明確にならず、複数楽章の楽曲の良さが見えにくいよう だ。

(2005.11.24.追加コメント)
先日『American Record Guide』を読んでいたら、ハンソンが指揮したロチェスター管の弱さについて指摘されていた。それはカンゼルがシンシナティ・ポップスと録音したCDと 対比しての議論だった。問題はどちらのオーケストラが劣っているか優れているかでなく、優れたオーケストラに恵まれて演奏されると、作品の良さが否応なし にも浮き出てくるのだな、ということである。

ジェラード・シュワーツ指揮シアトル交響楽団
米Delos D/CD 3073
Hanson Symphonies 1&2 Delos シュ ワーツ/シアトルSOの演奏は、自演盤よりもなめらかに流れていくように思う。特に第2交響曲のように、いくつもの美しい旋律が織り込まれているような作 品には向いているようだ。私はシュワーツによるアメリカ音楽の演奏の全てを手放しに賛美しないのだが、ハンソンの全集は、おおむね良い仕上がりになってい ると思う。(05.03.27.)
エリック・カンゼル指揮シンシナティ・ポップス管弦楽団
米Telarc SACD-600649 (SACDハイブリッド)
ハンソン 交響曲2カンゼル盤
パ ワフルで豊潤な音のするオーケストラによる充実した演奏。シンシナティ・ポップスのメンバーは基本的にシンシナティ交響楽団と同一。その期待に違わぬ内 容。やや鳴り過ぎの感じもなくはないが、自演盤が幾分ドライな分、こういった滑らかでスケール感の大きい演奏に共感するのかもしれない。カップリング曲は 《メリー・マウント》組曲、《Bold Island Suite》、《Fanfare for the Signal Corps》 (05.11.24.)


交響曲第5番 《シンフォニア・サクラ(聖礼交響曲)
ハワード・ハンソン指揮イーストマン・ロチェスター管弦楽団
米Mercury MG50087 (LP)
hanson sym #5 hanson, cond. ア メリカの作曲家、特に20世紀に書かれた多くの管弦楽作品を評するに「ハリウッド的」という言葉が使われる。おそらくハリウッド映画に聴かれる音楽スタイ ルが19世紀ロマン派の様式を踏襲しているからだろう。ハンソンの交響曲も第2番までは甘美な旋律を多用しているし、和声も濃厚で色彩豊かだから、そうい う例え方で容易に音楽の響きが想像されるのなら、参照点として有効だろうと思う。ただハンソンの交響曲も番号が進むにつれて音が不協和的になり、ずっと複 雑な表現を感ずるようになる。そして旋律よりも、繰り返し奏される動機が強い欲求の中で盛り上がってくる音楽が多くなってくるように思う。1954年に書 かれた第5交響曲はヨハネによる福音書に記されたイエス復活の物語に題材を置いているため、こう名付けられた。1955年ユージン・オーマンディ指揮フィ ラデルフィア管弦楽団によって初演されている。15分あまりの単一楽章作品。

しかしハンソンによれば、この曲は復活祭の物語をそのまま標題音楽的にしたものではないという。ただ彼が主張する「クリスチャン信仰の本質であるこの物語 の悲劇と勝利、神秘と革新」といった雰囲気を醸し出そうと試みたことは確かだ。また第5交響曲は、第4交響曲、《ヘルヴィム讃歌》、《汝の名の素晴らしさ よ》とともに、ハンソンのキリスト教信仰にもとづいた作品の中の一つと位置づけられるそうだ。

このLPは自作自演でモノラル録音。カップリングは同じく自作の《ヘルヴィム讃歌》とバーバーの交響曲第1番である。(05.03.27.)
ジェラード・シュワーツ指揮シアトル交響楽団
米Delos DE 3130
Hanson Sym 5+7 Delos


Song of Democracy. Turtle Creek Chorale; Dr. Timothy Seelig, artistic director; Dallas Wind Symphony. Reference Recording RR-49CD.

もともと吹奏楽と合唱のために書かれた愛国主義的作品で、歌詞はウォルト・ホイットマンによって書かれている。録音のせいかどうかは分からないが、 全体に輪郭がぼんやりとしていて、合唱の歌詞が聞き取りにくい。伴奏の方もあまりパワフルでなく、不満。合唱は、確か、もともと混声合唱だったはずだが、 ここでは男声のみのために編曲がなされている。(2000.5.7.)


作曲家リストに戻る
メインのページに戻る