自作自演集 ドン・ギリス指揮新交響楽団 英Vocalion CDLK 4163 |
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交響曲第51/2番、アラモ、大草原の学校物語、開拓町
の肖像、音楽の発明者 |
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かつて米ロンドン・レーベル(英デッカ録音、ジョン・カルショー)からLPと10インチ盤でリリースされていた、ドン・ギリス指揮による録音をすべて集めたもの。最後の《音楽の発明者》だけは「ボーナス」として2枚目に収録されている。おそらく全部を収録フルの2枚組にならないため、2枚目をボーナスとすることで、(2枚目は15分もない!という)買う方の不満をやわらげたのではないかと思われる。オリジナルLPは古いので、このようにノイズなしで聴きやすいCDはありがたい。軽くエコーがかかっているようだけれど、スピーカーで聴く分には気にならないのかもしれない。(05.04.03.) 以下、これまでに書いたオリジナルのレコードの感想を載せておく。(05.6.3.) |
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交響曲第51/2番、アラモ
ドン・ギリス指揮ロンドン新交響楽団 米London LPS 177(10インチ) Naxos Music Library → http://ml.naxos.jp/work/225219 |
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交響曲第51/2番は意外とあっさりとした響き。まだ音符がすべるようなところが多くあり、新しい録音の方に軍配が上がってしまうのかもしれないが、それなりに楽しい演奏ではある。カップリングされている《アラモ》にしても、消化不足である印象を持った。中間部など、戦闘の描写の部分にしても、もう少し共感を持ってほしいようにも思う(エンディングなど、聞かせるところもあるのだが)。(01.5.7.、02.1.10.改訂、2015.2.13. NMLリンク追加) | |
音楽の発明者、開拓村の肖像
ジャック・キルティ(ナレーター)、 ドン・ギリス指揮ロンドン新交響楽団 米London LL 176(LP) Naxos Music Library→ http://ml.naxos.jp/work/222362 |
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チェッカー・ゲーム好きのおじいさん。今夜はなぜか、4歳
の孫ウェンディーのベビーシッター。夜も深まり、さっさとウェンディーを寝かしつけて、自分の好きなゲームに集中したいところ。ところがウェンディーはお
話をしてくれないと寝られないとだだをこねる。おじいさんは子守唄なら短くていいぞ、と提案するが、ウェンディーは「子守唄なんて知らないでしょ。お話に
して」とごねる。おじいさんは「子守唄を知らないだって? わしは子守唄を発明したんじゃぞ。いや、音楽を発明した」と話が膨らむ。ウェンディーは笑いな
がらも、
「それじゃ、おじいさんがどうやって音楽を発明したかを、お話にして聞かせてよ」とせがむ。「それじゃあ…」と、おじいさんは、400万年前から遡って、
自分がどのように音楽を発明したかを、語り出す。 その後はブリテンの《青少年の管弦楽入門》ばりの楽器紹介(もちろんここでは変奏曲にはなってない)も兼ねた、音楽発明の物語。発 明するといっても、もちろんマジメにどのように発明したかなどという話ではなくて、「次にワシは、ホルンを発明した」といえば発明したことになり、「ヴァ イオリンを発明した」と言えば発明したことになるという感じなのだが、ときおり音をつかったヒネリもきいていて、笑いを誘う。なお、プッチーニもトスカ ニーニも、このおじいさんが発明したことになっている。 音楽ジャンルにしても、このおじいさんの発明だそうで、不思議なおまじないでマーチが誕生したことになっている。そのおまじないは…秘密にしておこう(ヒント:このおまじないの言葉はギリス作品の名前にもなっている)。 さんざんほら吹きをした後にはオチもある。その内容もお聞きいただいたときのお楽しみにしておこう(ヒント:「歴史の声」が聴こえてきます)。 この作品の初演はNBC交響楽団により1949年8月22日に行われた。なるほどラジオ向けの作品だと思う。そして初演を担当した指揮者は、何とアンタル・ドラティ。ナレーターはネルソン・オルムステッドだった この30センチLPレコードの裏は、テキサス州フォートワースを描いたという《開拓村の肖像》という組曲。内容は<商工会議所>、<西部が始まった場所>、<大牧場主の家でのパーティー>、<大草原の日没>、<大通り--土曜の夜>の5楽章からなる。第1楽章などは、いかにも適当にリハーサルしてから録音したという感じの演奏。でもその後は割と聴けた。最終楽章には、なぜかガーシュインの《パリのアメリカ人》に聴かれた動機も登場。(02.6.8.執筆、02.8.10.訂正、05.6.4.改訂、2015.2.13. NMLリンク追加) |
管弦楽作品集 デヴィッド・アレン・ミラー指揮アルバニー交響楽団 米Albany TROY 391 Naxos Music Library→http://ml.naxos.jp/album/TROY391 |
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交響曲 "X"("大きなD")、ダンスパーティー (シンディグ) 、アンコール協奏曲、交響曲第51/2番 | |
ギリスの作品を集めた新しい録音集。これでブームがおこったのか、Albanyレーベルからはギリス作品だけのCDがいくつもリリースされ、イギリスのVocalion(Dutton)からも、デッカ録音によるギリス自作自演が発売された(上記参照)。 こ のCDに収録された4つの作品のうち、《ダンスパーティ》(Shindig)は未出版のようだ。最初の作品、交響曲"X"の「X」は、第10番の意味では なく「謎」を意味するというのがギリス未亡人の解釈となっている。一方副題は「大きなD」で、これはテキサス州ダラス(Dallas)の頭文字なのだそう だ。カウボーイの州として知られるテキサスの大都市にちなんだ音楽ということになるのだろうか。この作品に限らず、ギリスの作品はやたらと元気のいいのが 特徴。このミラーの演奏は自演の音源(吹奏楽編曲)よりはずっとゆっくりとしたテンポで行わているので、クレイジーさが不足しているのかもしれないが、そ れでも充分面白い。 《ダンスパーティー》は8つの<エピソード>を配した20分あまりの大作で、架空の映画という印象が ある。いろんな短い動機があちこちに現れて、それぞれが何かアクションを表現しているかのように聞こえるからだ。おそらくチープな西部劇映画か何かで、最 後に悪役が決闘で打たれて死ぬという流れまで見えてくる。聴きながら、自分の映画をイメージしてみるのも一興だろう。 3 曲目はアンコール協奏曲。ギリスの2曲あるピアノ協奏曲のうちの最初のもの。題名がなんとなくフザけているようにみえるけれど、中身は割とスタンダードな 3楽章形式。最後の交響曲51/2番は、5番と6番の間に挟まってできた作品とされている。しかし一般には「6番と呼ぶにははばかれる作品と作曲者がみな したため」と考えられているようだ。 ちなみに交響曲51/2番の初演はアーサー・フィードラーとボストン・ポップスが 1947年の5月に行い、同年の9月、あのトスカニーニがラジオ初演もしているので、この曲も有名になった。残念ながらそのトスカニーニの演奏は公には なっていないが、米軍が大平洋戦争中に作製したV-Discの1枚に収められているようだ(1947年9月21日、ニューヨークのNBCStudio8H にて録音、V#826)。(02.6.10.執筆、05.6.4.改訂、2015.2.13. NMLリンク追加) |
交
響曲第51/2番《戯れの交響曲》 ロナルド・コープ指揮ニュー・ロンドン管弦楽団 英Hyperion CDA67067(アルバム "American Light Music Clasics" ) |
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英 語の副題は「Symphony for Fun」。「戯れの交響曲」は国塩哲紀さんの訳(「200CD 吹奏楽 名曲・名演」、立風書房、148ページ)。吹奏楽版は聴いたことがあったが、このオリジナル版の演奏は、なかなか爽快で勢いがある。管楽器が主に活躍するが、弦楽器があることで、ちょっとした音色的な違いがあることは確か。 第 1楽章の「無窮動」は、ブラシをつかったスネア・ドラムが蒸気機関車を思わせるような快速な音楽を作り出し、あちこちに、ずっこけな音型の入る、にぎやか な音楽。攻撃的に入るところと、適当に、ノリに任せる部分がうまく使い分けられたこの演奏は楽しい。ソナタ形式ではないようだが(第2主題はない)、中間 の次々調が変わるところは展開部のようだし、そのあと冒頭の雰囲気の戻ってくるあたりは、一応再現部のつもりなのかもしれない。 第 2楽章「霊歌?」は、おそらく黒人霊歌を思わせるような旋律の歌せ方を、ギリス自身が、「多分そういう感じ?」と言っている印象。ドヴォルザークの「新世 界交響曲」の第2楽章を思わせる部分、フォスター的な、南部賛美歌的な部分もある(下記「アラモ」のテンポの緩い部分は、この楽章の最初の方の雰囲気があ る)。 第3楽章は「スケルツォフレニア」と題されている。のんびり気分転換というのは趣味でないらしく、騒がしく・にぎやかにいきたいところがどうしても出てしまうといった感じ。ブルース・スケールを使った旋律、クラヴェスの入ったラテン的な部分など、一つところに落ち着
かない楽想の面白さだろうか。終わりがズッコケである。 |
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アルトゥーロ・トスカニーニ指揮オーケストラ(NBC交響楽団?) 米V-Disc No. 826(SP) |
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1947年9月21日、ニューヨークのNBCスタジオ8Hにて収録されたラジオ初演の記録がこのSP。オーケストラは明記されていないが、おそらくNBC交響楽団だろう。 トスカニーニらしく、オーケストラの発音が明快だ。メリハリも効いていて、ぴしっと揃うアンサンブルには潔さを感ずる。アップテンポの部分に完璧でない部 分はあるけれど、細かい乱れは勢いで持っていくところがある。録音が古いのは仕方ないが、作品の良さを感ずるという点ではベストの演奏だと思う。第1〜第 2楽章と、第3〜第4楽章の間はほとんどない。この頃すでにテープ編集はできたのだろうか?(05.7.7.執筆、05.7.11.訂正、 06.10.12.追加) なお、YouTubeでこの音源が公開されている (2011.8.25.追記) ↓
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吹奏楽作品。(2019.04.07.)
吹奏楽曲。急緩急の3部形式のようだ(2019.04.07.)。
吹奏楽作品。(2019.04.07.)
アメリカを題材にしたユーモラスな音楽が売り物のギリスだが、この作品は、テキサス独立戦争に取材した、シリアスな作品。作曲にあたっては、標題音 楽を書こうとはしなかったが、かつてアラモの砦(とりで)を初めて訪れた時に思い浮かんだことを内観的に解釈したという。緩-急-緩の構成で、急の部分で は、ギリスらしい、おちゃめなフレーズが管楽器群などに現われるが、緩の部分では、弦楽器を中心に、19世紀後半の音楽のような色濃い半音階和声を使っ て、情感豊かな響きが聞かれる(ただ主旋律は、どことなくフォスターのようだ)。
全体として、スムーズに流れる一遍の物語には懐の暖かさが感じられ、親しみやすい作品に仕上がっている。
演奏はジャケットによると高校生のオーケストラのようだが、よく奮闘していると思う。(99.11.20.)
軽いタッチで気さくな吹奏楽作品集。有名な<台所変奏曲>の他、楽団における指揮者の役割とは何かについて、話しながら音楽を進める14分あまりの作品、<ダウンビート>などが、このLPのハイライトかもしれない。
その他の収録曲は、Unistrut: Concert March, Mr. Big: Concert March, Jr. Hi Fi March, This Solemn Hour, Footsie, Moonmist, Three Time Bluesである。どれも楽しく聴き流せる作品ではある。(99.11.20.)
ドン・ギリスが自作を、自らの解説により紹介する30分のラジオ番組。時間の制約上、長時間の作品(あるのかな?)は再生できないが(交響曲の場合はいずれかの楽章、という場合もある)、それでもギリス作品をたっぷり楽しめる内容だ。(2023-10-29)
ドン・ギリスが司会をしてアメリカ音楽を紹介する番組。放送されたのは、以下の曲目。ギリスの声を筆者が聴いたのはこれが初めてだった。残念ながら演奏しているオーケストラは言及されていない。この番組のために演奏しているようなのだが…。 (2019.1.4.)
1. ジョージ・ホワイトフィールド・チャドウィック:《シンフォニック・スケッチ》から<ジュビリー>(番組では《ジュビリー序曲》として紹介されている)
2. 黒人霊歌(編曲者不明):《誰も知らない私の悩み》
3. オットー・スザーナ (Otto Cesana, 1899-1980):《シンフォニー・イン・ジャズ》より第1楽章
4. ウェイン・バロー (Wayne Barlow, 1912-1996):《冬過ぎたりなば The Winter's Past》
5. アーロン・コープランド:《劇場のための音楽》から<ダンス>
6. デューク・エリントン:《アメリカン・ララバイ》
7. ランダル・トンプソン:《5つの肖像画》よりフーガ
8. チャールズ・トムリンソン・グリフィス:《白孔雀》
9. エリー・シーグマイスター:《オザーク・セット》より<土曜日の夜>