ジェイコブ・ドラックマン (Jacob Druckman, 1928-1996)の音楽


ジェイコブ・ドラックマンは1928年6月26日、フィラデルフィア生まれ。父親は製造業を営んでいた。3歳でピアノを始め、10歳になると、地元フィラデルフィアを代表する音楽家で、フィラデルフィア管弦楽団の楽団員だったルイス・ゲゼンスウェイに師事し、10歳の前半は彼にヴァイオリンと作曲を教わっている。その後ジュリアード音楽院でヴィンセント・パーシケッティとピーター・メニンに学び、タングルウッドではアーロン・コープランドにも学んでいる。1957年には、母校のジュリアードで教鞭を執り、1960年代なかばにはコロンビア電子音楽スタジオで働き始めた。その後1968年からは新ロマン主義に傾倒するようになった。背後には、10月10日、ニューヨーク・フィルによるベリオの《シンフォニア》が初演されたことがあったという。またドラックマンは(ガンサー・シュラー、ジョセフ・シュワントナー、マリオ・ダヴィドフスキーらとともに)、現代音楽界で最も注目を集める権力者のひとりでもあり、助成金や賞の委員としても絶大な影響力を持つ存在だった。1996年5月24日、コネチカット州ニューヘイブンにて亡くなっている。(この項目 2023-08-19 執筆)

《ディベルティメント (Divertiment)》(1950) ニューヨーク・フィロムミュジカ
YouTube (第1楽章)

出版されたドラッグマン作品んとしてはもっとも古いものだそうだ。ぱっと聴いた感じ、新古典主義的な作風。(2023-08-19 執筆)


《アニマスI(Animus I)》(1966-67) アンドレ・スミス (トロンボーン) 、コロンビア=プリンストン電子音楽スタジオ Turnabout TV34177 (LP) "Electronic Music III"

作曲時のアピールとしては、テープと生演奏のインタラクティヴな音楽作りということ だったようだ。そういうテクニカルな部分のアピールは、テープを使うという時点で古めかしいものになってしまったけれど、それでも電子的に作ったものと生 身の人間によるコラボレーションという試み自体は現在も続いている。また、そのインタラクティヴなアイディアを実作品を通してアピールすること自体には意 味があるだろうし、作曲当時にしても、作品そのものが面白くなければ、いくら技術的に面白くても、エンジニアではない人たちへの、幅広い聴衆へのアピール は難しいと思う。

では、この作品は面白いのかどうか。私自身は、盛り上がりなどがあって面白いと思う。最初はトロンボーンがリードしていくようでいて、次第にテープが食っていくという感じだろうか。

なお、カップリングはベリオの《テーマ:ジョイスへのオマージュ》、ミマロールー《演奏者と作曲者のためのピアノ音楽》、《テープのための6つの前奏曲》である。またYouTubeにはベイラー大学音楽学部のケン・ハースト (バス・トロンボーン) による演奏がある。
YouTube (2008.11.26.、2023-08-19 YouTubeリンク追加)


《アニマス II (Animus II) 》(1967-68) ジャン・デガエターニ (メゾソプラノ)、リチャード・フィッツ、ゴードン・ゴットリープ (打楽器)、コロンビア=プリンストン電子音楽スタジオ CRI 255

初演は1970年2月2日パリ市立劇場において、ドメーヌ・ミュジカルによって行われ、アメリカ初演は同年5月6日に行われた。CRIの録音は、アメリカ初演のメンバーによるものである。(2023-08-19 執筆)


《ラミア (Lamia)》(1974, expanded 1975) ジャン・デ・ガエターニ (メゾ・ソプラノ)、ホルヘ・メスター指揮ルイヴィル管弦楽団、ダニエル・スパーロック(副指揮者) Louisville Orchestra First Edition Records LS-764 [LP]
Spotify (第1・第2楽章)
YouTube

ラテン語、フランス語、マレー語、イタリア語、ドイツ語といった、多言語のテキスト による歌曲である。デ・ガエターニの歌唱は素晴しい。オケの反応も良い。ドラッグマンはダイナミックに音をうまく使いこなすテクニックをもっているが、音色が嫌いという人もいるかもしれない。基本的に無調。ただ、カヴァッリの《ジアゾーネ》の引用がある。このカヴァッリは印象的に始まる一方、戻るあたり は、ちょっと繋ぎがうまくいっていない。趣味が悪いのか良いのかについては、意見が分かれそうだ。突飛な終わり方も、妙に印象に残った。 (99.3.18.、2008.11.28軽い改訂)


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