ポール・クレストン (Paul Creston, 1906-1985) の音楽


交響曲第2番 ネーメ・ヤルヴィ指揮デトロイト交響楽団 Chandos CHAN 9390
Naxos Music Library→http://ml.naxos.jp/work/3026456


クレストンはイタリア人の血を持ち、5歳の時、父親に連れていってもらったシシリアの印象を大事にして育ったという。音楽は小さな時に 中古のピアノを無理して買ってもらったのがそもそもの始まりだった。しかし本格的に作曲家を志したのは26歳の時。すでに結婚して5年経っていた。 小さい頃からいろんな本を読み漁るのが好きだったというクレストンだが、作曲に関しても徹底的に本から学んだ。当時入手できる作曲法、和声や対位法、音楽 理論など、ニューヨークの図書館にあるものを片っ端から学習したらしい。その他音楽の講演会やコンサートにも積極的に出かけ、マンハッタンの地の利を活か した独学をした。

そのうち友人が、クレストンに作品を出版してみないかと持ちかけた。最初は乗り気がなかったクレストンだが、一気奮闘して《ピアノのた めの7つのテーゼ》を New Music Editionに持ち込む。当時この出版社の編集を担当していたのが、あのヘンリー・カウエルだったのだが、カウエルはクレストンの才 能を即座に見抜き、作品出版を快く引き受けたという。カウエルは、その後もクレストンの作曲を常に励ましていたらしい。

2楽章形式の第2交響曲は1944年の作品。クレストンは同曲を「全ての音楽を代表する2つの基礎−歌と踊り−の賛歌」だとし ている。確かに第1楽章にみられる美しく叙情的な旋律は魅力的であり、感情の自然な起伏を大切に、素朴に歌い上げている。おそらくピアノの使用が、ハープ では表現できない、この素朴さにつながっているのだろう。第2楽章は激しいパッセージがレチタティーヴォ風に流れ出す部分と、白熱したダンスの部分で成り 立っている。自然に体が乗り出してくるような音楽だ。

クレストンは1970年代の雑誌記事で、近年の作曲家はテクニックの習得に囚われすぎて魂の抜けた作品ばかり作っていると言っている が、アカデミズムと自然に距離を保つことが出来たクレストンならではのこのような発想が、力強い第2交響曲の原動力になっていると思う。

このヤルヴィとデトロイト交響楽団による録音は、ぐいぐいと曲を押し進め、それでいてすっきりとまとめる秀演だ。録音的も、LP時代の 名録音、ミッチェル盤より聴きやすい。カップリングはアイヴスの第2交響曲。(1998.9.3.)

YouTubeに同音源があったので、ご参考まで。(2019.6.28.)


交響曲第2番 ハワード・ミッチェル指揮ナショナル交響楽団 Westminster XWL 18456(LP)

筆者がこの曲に出会った録音なので、思い入れがある(ボストン大学の図書館にあった)。モノラルで古い録音ではあるが、きりりと引き締まった硬質な音が好きだ。

YouTubeにこの音源があるので、リンクしておく。(2020-07-19)


交響曲第1番、第2番、第3番《三つの神秘 (Three Mysteries)》テオドール・クチャール指揮ウクライナ国立交響楽団 Naxos 8.559034
Naxos Music Library→http://ml.naxos.jp/work/3026456


まずは第2交響曲の第2楽章に聴く白熱の舞曲に注目。反復されるリズムの上に様々な楽想が堆積し、高揚する。それでいてしっとりとした抒情も忘れない均整のとれた演奏が見事。ヤルヴィ盤 (シャンドス) と比較するのも面白い。第3番はキリストの復活を祝うセクエンツィアがシンコペーションを伴ったリズムに乗せて楽しませる。出世作となった第1交響曲はこ れが唯一の録音。廉価盤でもあるし、ぜひお試しいただきたい。(『レコード芸術』2006年6月号)

演奏としては「無難」という印象が強いが、一緒に収められた第1交響曲が貴重だし、値段の安いのが魅力であろう。3番には、ミッチェ ル盤LPとジェラード・シュワーツ盤CD(米デロス)がある。後半の3つの交響曲が録音される計画もあるとのこと。(2000.12.9.)


サキソフォン協奏曲 Op. 26 ロブ・バートン(サキソフォン)、マーク・ウィッグルスワース指揮バーミンガム市交響楽団

YouTubeにこの音源があるので、リンクしておく。(2020-07-19)


サキソフォン協奏曲 Op. 26 ヴィンセント・V・アバート(サキソフォン)、アルトゥール・ロジンスキー指揮ニューヨーク・フィルハーモニック・シンフォニー

1944年2月13日のラジオ初演の録音だそうだ。(2020-07-19)


マリンバ小協奏曲 Marimba Concertino ペーター・サドロ(マリンバ)、ウォルフガング・レーグナー指揮バンベルク交響楽団 Koch International 3-6415-2.
Spotify→リンク


マリンバ演奏家の間では良く知られた名曲だが、なぜか全曲オケ伴奏の録音というのがあまりない。第1楽章のみは、フィラデルフィア管弦楽団の打楽器奏者がオーマンディと録音していた。全曲は、ピアノ伴奏版がFontecに録音されていた(「種谷睦子 マリンバ・エクスプレス」フォンテック FOCD-3257。なお「種谷睦子 マリンバ・エクスプレス」のCDの同時収録曲はJ. S. バッハ/シャコンヌ、一柳慧/パガニーニ・パーソナル、高橋悠治/子守歌、三善晃/組曲「会話」、黛 敏郎/木琴小協奏曲となっている)。

CD時代になって初めて見たサドロ盤の全曲の録音、カップリングはミヨーのマリンバ、ビブラフォンとオーケストラのための協奏曲と、Berthold Hummelの打楽器協奏曲である。(2001?執筆、2004.8.13.追記、2019-11-05 Spotifyリンク追加、2020-07-19記述訂正)。


舞踊序曲 (Dance Overture) アルフレッド・アントニーニ指揮オスロー・フィルハーモニー管弦楽団 CRI-111(LP)

力強いオープニングにより鮮やかに始まるコンサート・オープナー向きのオーケストラ作品。急緩急の3つの場面からなる(ただしABAではないようだ)。エネルギッシュなテンポとリズムと、クレストン独特の和音が美しい。(05.5.15.)

YouTubeに New World Records/ CRI がアップした音源があるので、リンクしておく。(2016.10.8.)


交響曲第6番 作品118 (1981) フィリップ・ブルネッレ指揮ナショナル交響楽団、ジェームズ・モーザー (オルガン)

世界初演の録音だそうだ。作風としては、1980年代に入っても時代の波に流されず、安心してクレストンの音楽に浸れるといえるのかもしれない (2019.03.27.)。


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