アーロン・コープランド:交響曲第3番

レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団 独Deutsche Grammophon 419 170-2
 
バーンスタイン、2度目の録音。ニューヨーク・フィルの機能性の良さと、その裏腹にある、独特な荒っぽさが魅力となっている演奏。ス ラトキンの演奏に接してしまうと、もっと楽器間のバランスが取れるような所も聞こえてくるし、やや各奏者が主張しすぎてしまうような部分もある。「そんな に頑張らなくても」と思う箇所もなくはない。しかし、バーンスタインは、決して重要なポイントを落としているようには聞こえないし、一聴した時の、ねじふ せるような説得力には、やはり納得してしまう。この演奏が気に入らないということであれば、スラトキンの方向が、あるいは自分にあっているのだと、考える べきなのだろう。(2001.1.12.)(アップロード01.1.22.)

レナード・スラトキン指揮セントルイス交響楽団 米RCA Victor 60149-2-RC
 
バーンスタインの演奏が、荒削りで力こぶを見せるようなたくましいアメリカを表現しているのに対し、スラ トキンのは、力強さは失わずに、より流麗でなめらかな音楽で聴かせる。一聴したところ、物足りないようにも聞こえかもしれないが、注意深く聴くと、その良 さが訴えてくる。特に第1楽章の両端や第3楽章など、一見地味にみえる箇所が、いきいきとしているのが特徴。第4楽章など、音楽的に高揚してくる部分も、 決して和音の美しさが、大音量にとって代わられることがない。コープランドが、《アパラチアの春》のリハーサルで、曲のことを、ドイツ語を使って「アメリ カーニッシュ」と言っていたが、このスラトキンのアプローチの場合も、下手にアメリカさを狙わず、交響曲がもともとヨーロッパ産であることを感じさせてい るようだ。(2001.1.12.)


Colorado Symphony Orchestra; Marin Alsop, conductor. NPR「Performance Today」放送。

戦没将兵記念日の今日、さっそく公共放送の番組を聴いてみる。NPRのPerformance Todayだ。もうこの番組でコープランドの第3を聴くのは3回目ということになってしまった。マーリン・オーソップ指揮のコロラド交響楽団の演奏。しか しまあ、飽きずにこの曲を放送するなあ。解説では「ファンファーレ」が何といっても注目される、アメリカのDNAみたいなもの、とオーソップ自身が語る。 交響曲では、ストレートにファンファーレにならないところもいいらしい。ラジオのアナウンサーは「偉大なアメリカの交響曲」という言葉に最も近い作品とべ た誉め。そこまで言われると、引いちゃうのが人情。相変わらず愛国主義・ナショナリズムぷんぷんだなあ、と思わざるを得ない(作品そのものというより、こ ういうコメンタリーの在り方の話)。コロラド交響楽団の演奏自体は、危ないところもなく、無難という感じ。ただ、もう少し、焦点がしぼり込める部分もあっ たのではないかとも思った。流れてしまう傾向があったから。(2000.5.28.)



アーロン・コープランド:エル・サロン・メヒコ

1932年の秋、コープランドは初めてメキシコを旅した。彼はトラクスカラという所の小さな村に2ヶ月間滞在したが、メキシコ・シティも度々訪れることが あった。この滞在中、コープランドはメキシコを主題にした作品を書くことを考えていた。彼はトラクスカラでの経験から、地方色豊かで伝統的な文化から楽想 を得ることもあったようだが、結果的にはもっと都会的な踊りの力強さに圧倒されたようだ。

コープランドは曲を、メキシコ・シティにある人気のダンスホールにちなんで、エル・サロン・メヒコと名付けた。コープランドによれば、彼は「このダ ンスホールの中に、メキシコの『人々』とのいきいきとした触れ合い」を感じ、「その情感をアメリカ人に『お土産』として持ち帰りたい」と思ったそうだ。音 楽的には「どぎつく、味わいがあり、暴力的でもありそうな」ダンス音楽が、作品の性格づけに強く影響している。

(1)アーロン・コープランド指揮ニューフィルハーモニア管弦楽団
Sony Classical SM3K 46559 (The Copland Collection, 1936-1948)

オーケストラに若干弱さが感じられる。アメリカのオーケストラのスピード感、威圧感を知った人には物足りないかもしれない。どちらかというと作曲者 のオーケストラの扱いは室内楽的で、作品をきちんと整えようとする趣が強い。自演という歴史的価値を踏まえて聴くべきだと思う。しかし、メキシコ人のエ ドゥアルト・マータの演奏は、これにも増しておとなしく、もしかするとそういうのがメキシコ音楽に近いのか? と思われることもあるが、それは筆者の知識 では分からない(同じマータでも、<ロデオ>は白熱の演奏だった)。初演者のカルロス・シャベスはどのように演奏したのだろうか。考えさせられる(なおア メリカ初演は、NBCラジオ放送で、指揮はエイドリアン・ボールトだった)。

(2)レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニー
Sony Classical

迫力のある熱演。ただし時々コントロールを失い、荒っぽさが表にでることもある。「メキシコ風」という点にこだわると、面白さはやや薄れてしまって いるかもしれないが、アメリカの、バーンスタインの若々しさが体感できる秀演である。

(3)アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団
RCA

シンフォニックな響きの爽やかさを保ちながら、スピード感も決して失うことのない秀演。やや折り目正しすぎるきらいはあるが、楽曲への真摯なアプ ローチには好感が持てる。
(98.2.27、98.5.20.、98.5.30.修正)


赤 い仔馬 サウンドトラック 米Varese Sarabande STV 81259

赤い仔馬サントラ
スタインベックの同名の名作を映画化したもののサウンドトラック。一部 は組曲となっているが、これは1948年に録音された78回転盤から起こされたもの。もともと商業的録音としては考えられていなかったものだという。収録 されたものを全部合わせても30分に満たないようだ。(03.12.22.)





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