ウィリアム・ボルコムの音楽

ピアノのための12の新しいエチュード マルク=アンドレ・アムラン(ピアノ) 米New World NW354-2

1988年のピューリッツァー賞受賞作品。トーンクラスターや細かいペダルの使い方、複雑なリズムや自由拍節、ラグタイムなどなど。ボルコムの自由奔放な作曲法の選び方が分かる。基本はおそらく自由な無調で、時々思い出したように調性的になるといった感じ。楽譜と一緒に聴いた方が、テクニックのすごさが分かって面白いのかもしれない。アムランが好きな方向けかもしれないが。同時収録はステファン・ヴォルペの《戦いの曲》。(02.2.17.)


ヴァイオリン協奏曲、協奏幻想曲、交響曲第5番 セルジウ・ルカ(ヴァイオリン)、デニス・ラッセル・デイヴィス指揮アメリカン・コンポーザーズ・オーケストラ 英Argo 433 077-2

ボルコム ヴァイオリン協奏曲CD

ヴァイオリン協奏曲の第1楽章などは、自然に古典的な語法。第3楽章は様々なポピュラー音楽のスタイルが入り乱れる(ラグタイム/クルト・ヴァイル風の箇所 もあり)。ボルコムは《黒の主》(1962)というオルガン曲辺りから、こういう様式併置/コラージュ風の作風で書く試みをやっているようだが、このヴァイオリン協奏曲もその流れで捉えられるのだろうか。

第3楽章のジャズ風/ポピュラー・ソングな作法については、初演者で献呈先である、ヴァイオリン奏者、セルジュ・ルカがジャズ・ヴァイオリニストと仲が良かったことと関係しているようだが(ライナーによると)、そうでなくても、彼自身がジョプリンを弾くピアニストであり、自らラグタイムを作っている辺りからして、この辺に関心があるのだろう。

第5交響曲の第1楽章も古い形式・フレーズ観をベースにしながら、不協和な音を挿入してゆくタイプの作品。第2楽章では賛美歌や《トリスタンとイゾルデ》の一節も顔を覗かせる。第4楽章は<機械>と題されており、クリストファー・ラウス流の騒々しくダイナミックなエンディングが待っている。(02.2.17. 執筆、04.9.17. 改訂)


黒の主 ウィリアム・アルブライト(オルガン)、シドニー・ホドキンソン(パーカッション)、ミシガン大学電子音楽スタジオ制作のテープ  米Nonesuch H-71260(LP) ジャケット写真(36kb)

ノンサッチ・レコード委嘱によるオルガンと打楽器、テープに固定された音のための作品(1967年)。タイトルの「黒の主」というのは、もともとはキリスト教の聖職者たちが始めた「黒ミサ」にヒントを得ているのだそうだ。それは、キリスト教のミサを逆さに行うというもので、ミサにより奇跡が起こせるのならば、その逆の奇跡も起こせるはずであるという思想があるのだという。つまり、悪魔の力を借りて、人の不幸を呼び起こすというもの。魔術や錬金術の信じられていた時代の産物といえるのだろう。

作品は不協和音の多いものだが、どこからか楽しいポピュラー・ソングらしきものが聞こえてきたり、テープでゴーゴー (^_^;; らしきものが聞こえてきて曲が高揚していく不思議な世界。いわゆるコラージュ/様式混合的な作品を、「現代音楽」の範疇で比較的早く行った実例だったのかもしれない。

裏面は当音源のオルガニストをつとめるアルブライトの作品《オルガンの本》第2番。この《オルガンの本》は、確か米GothicレーベルのCDから3番まで収録されていたものが出ていたと思うのだが、この2番は、ボルコムのよりはずっとシリアスな趣きの作品(一種メシアン風なところもあり)。こちらにもテープは使われている。(02.2.17.)



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