ロバート・ラッセル・ベネット:行進曲「ダグラス・マッカーサー」

S. O. さんによる寄稿です。ありがとうございます。

R.R.ベネット(1894-1981)は、16歳の頃から作編曲に携わり、後 に、パリでナディア・ブーランジェの元で作曲を学んでいます。帰国 後、作曲家として多くの作品を書いていたのですが、特にオーケスト レーションの達人としてその名を轟かせるようになりました。最も有 名なのは、ガーシュインの歌劇「ポーギーとベス」の編曲作品 「Symphonic Picture」で、これはガーシュイン自身の編曲した組曲 「キャット・フィッシュ・ロウ(ナマズ横町)」を霞ませてしまうほ どの人気を博しました。その後、主にブロードウェイのミュージカル のオーケストレーションにその才能を存分に発揮しましたが、作曲の 方も、多くの交響曲、協奏曲などがあり、決して達者な編曲家に留ま っていたわけではなかったのです。

余談ですが、ベネットはギネスブックに登場します。 R.ロジャー ス作曲/ベネット編曲による交響曲「海の勝利」が、演奏に13時間かか ったという、史上最長の演奏時間の曲としてです。(ただし、この記 録はギネスから削除、復活を繰り返していますので、誤報である可能 性も高いです。)

とろこで、ベネットの吹奏楽曲も「シンフォニック・ソング」「古 いアメリカ舞曲...」が知られているだけですが、調べた限りでは少な くとも10曲以上の吹奏楽曲(但し、アメリカン・ウインド・シンフォ ニーの為に書いた、「コンチェルト・グロッソ」や「オハイオ川」組 曲などは、通常の吹奏楽団の編成とは異なります)を残していまし て、これらも是非発掘されていくべきでしょう。そんな中から、小気 味よいマーチを1つご紹介します。

さて、曲の標題は、ご存知終戦直後日本を統治したマッカサー元帥 のことです。作曲動機がどういうものかは知りませんが、何か仕掛け がありそうです。

形式は、大雑把に言ってA B Cの形です。シンコペーションを伴った 軽快な前奏そしてAの部分に入ります。マーチとしてはオーソドックス なのですが、やはりブロードウェイ的な明るさを持っていて、屈強な 元帥のイメージはありませんね。で、次にBの部分ですが、ベネット特 有の魅力的なハーモニーを持った流麗なメロディ(シンフォニック・ ソングの1曲目を想像してください)で、これまた良いですね。で も、やはり軍人のイメージはありません。

さて、Cのトリオは、米国の軍歌「老兵は死なず...」のメロディ (バーンズの「ロング・グレイ・ライン」の中間部でも使われてい る)が3回繰り返されます。なるほど!!、これが「マッカーサー」 なんですね。(理由は、世界史の先生にでも聞いてください。)そし て、この2回目の「老兵は死なず...」の対旋律が、なんとケークウォ ークです(「古いアメリカ舞曲....」の第1曲を想像してください )。やってくれますねえ。そうして、少しAの部分のエピソードを挟ん だ後、元気良く3回目を繰り返して曲を閉じます。

中学生でも演奏できるほどの比較的易しい2分半ほどの短い曲です が、随所にベネットの魅力を感じることができる、実に気持ちのいい マーチです。陸軍軍楽隊の演奏するマーチ、しかし良く見てみれば、 隊員たちは蝶ネクタイにタキシードだった....という感じでしょう か。(98.12.6.、99.11.27.アップロード.)



作曲家リストに戻る
メインのページに戻る