デヴィッド・バーマンの音楽
アルバム「Wave Train: Music from 1959 to 1968」 伊Alga Marghen plana-B 5NMN.020

Canons (1969), Ricercar (1961), Wave Train (1966), Sounds for a Film by Robert Watts (1968), Players with Circuits (1966), Runthrough (1967-1968)
 
バーマン(正確にはベーマン?)のCDからとりあえず1つ選ぶとしたら、やはりこれだろう。厳しく透徹した5、60年代の世界が広がってくる。《カノン》は1959年、ダルムシュタットにてシュトックハウゼンに圧倒されてから作られたもの。演奏のデヴィッド・チュードアとクリストフ・カスケルの緊迫したピアノと打楽器が聞かせる。2曲目は、プリペアド・ピアノのための作品とされているが、ケージ風に音色を固定したものではなく、むしろカウエル風の内部奏法といった趣き。しかし音楽語法的には、まぎれもなく前衛の影を落としている。電子音を使った作品群では、私はかつて、《Runthorough》の強烈な音の渦に巻き込まれたことがある。かつて米MainstreamからリリースされたSonic Arts UnionのLPにも収録されていたのだが、このCDでは、LPのような高い録音レベルと音源からの生々しさはなく、ちょっと驚いた。おそらくLPのはテープからのダイレクトであり、このCDのは、それを舞台上で再生したものの録音だからだろう。アルバムタイトルの《Wave Train》は、確か雑誌「Source」の付録レコードに収録されていたが、これも悪くない。《Players with Circuits》は、この「音の渦」的作風を、ライブ・エレクトロニクス作品としたものなのだろうが、個人的にはこれが3曲では一番ノイズ的に面白いと思った。それにしても、バーマンが、のちに温和なドローンに向かっていったのには、どういう背景があったのだろうか。《ロバート・ワッツ…》は、ちょっとした音風景と、気まぐれに挿入された音楽によるスナップショットの連続といったところか。(02.1.10.)



作曲家リストに戻る
メインのページに戻る