アルバム「不良少年たち」

ステファン・シュライエルマッヒャー(ピアノ)
Hat Art CD 6411

「音楽の不良少年」とはジョージ・アンタイルにつけられたあだ名だが、アメリカでは、このアンタイルやレオ・オルンスタイン、カウエルらを、イタリアの未来主義・騒音主義に結び付けて一まとめにすることが多い。カウエルといえば、トーン・クラスター(狭い音の幅の音をすべて塗りつぶすようにならす方法)を使ったピアノが有名であるが、このCDに含まれた作品がすべてこのクラスターをつかった作品ではない。またクラスターを使用した作品についても、旋律のフレーズが因習的だったり、クラスターの裏に、とっつきやすい旋律線が見え隠れしたりするものが多い。

それでも<バンシー>など内部奏法(ピアノの「箱」の中の弦を直接手で爪弾く演奏法)を使った作品は、この素晴しい録音で聴くと迫力があるし(ロバート・ミラーのNew World盤も良い!)、<虎>は迫力のある楽譜がどのように演奏されているか、それを一聴する価値はある。アンタイルの作品群では、<野蛮なソナタ>冒頭のクラスターが印象的だが、楽節や旋律線は案外規則的に組みたてられている。接続曲風の形式はもはやアンタイルのお決まりなのだろうか。

カウエルやアンタイルに比較して、レオ・オルンスタイン(1892年生)の作品には遊び心が足りないと感じたが、炸裂(さくれつ)するクラスターがエネルギッシュなリズムと燃える<野人は踊る>などは聴き物である。(1999.8.30.)



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