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2006年7月 9日
[思いつきメモ] 教育用音源と、その解説
学校で観賞する音楽教材として、専用レコードが編集されることがあります。もう15年近く前のものなんですが、ここに、そういったレコードに添付された「観賞教材指導資料」がありますので、小学校1年生分に書かれたこの資料 (複写) を眺めてみることにしました。まずは、この曲:
・プロコフィエフ 組曲《冬のかがり火》から<出発>
面白いのは、観賞用レコードではこの作品が《きしゃ》というタイトルに変更されて提示されているということ。そして、「曲の特徴」というところの記述が面白いです。引用してみましょう。
描写音楽の中には、音楽性の低いものもあり、描写音楽=低次元の音楽ととられがちであるが、プロコフィエフのようは巨匠の手にかかる作品は、決してそうではない。
この解説は、きっと、かなり「高尚」なクラシックを知り、ベートーヴェン様の絶対音を信奉する人たち向けに書かれているのでしょう。それで、クラシックの作曲家として有名なプロコフィエフ様ならば、「低次元の音楽など書くものか」ということを教えるんですね (え、違うって?)。でもプライヤー《口笛ふきと仔犬》とかイエッセルの《おもちゃの兵隊》は「低次元」の音楽なのでしょうか? (「ポップス」「ライト・ミュージック」と米・英では呼ばれます。日本では、アメリカの戦前の本に出てくる「セミ・クラシック (semi classical) 」なんていういい方をしています) また、 何が低次元でどうだのって、どのくらい小1に関係があるのでしょう?
・カバレフスキー 組曲《道化師》から<ギャロップ>
なぜか《ぎゃろっぷ》とひらがな表記になっています。適当な邦訳ってないんでしょうか? それで、解説には「ギャロッップという舞踏にふさわしく、この曲でもA-B-Aの複合三部形式がとられている」と書いてあります。小学校に入りたての子供たちに、この形式の理解はいかに役に立つのか、興味があるところ (指導案を埋めるのに役立つ?) 。
・ルロイ・アンダーソン おどるこねこ
この教材の使い方にはこうあります。「自然音がどのように描写されて音楽となるかを考えさせる。ここでは猫の鳴き声をバオリンで真似ているが、これを発展させて、他のいろいろの自然音についても、どのようなリズムの音がどのような音高感のある音か、どの楽器で真似ができるかなどを話し合わせるとよい。」
猫の鳴き声が「自然音」だとは知りませんでした。あれはバイオリンがやっていたのかあ(クラリネットもやってない???)。「どの楽器で真似ができるか」とありますが、オーケストラの楽器の種類は、小1でもみんな知ってるのでしょうか。「自然」かどうかは分からないけれど、身の回りにある音について考えるというのは良いですね。
それにしても、汽車という乗り物、馬・猫・犬という動物、おもちゃ…。選ばれた題材からみると、幼ない頃からからなじみを持ってきた主題を選べばそれでよいという印象を受けます。それ以上のことってあるんだろうか? 身体表現とリズム…なるほどねえ。でも音楽に合わせて体を動かすということだから、描写音楽である必要もないかもしれないですね。
その他、1~3年生の内容を通してみますと、このレコードの「指導のポイント」では「旋律を口ずさませる」「身体運動する」ことを強く推薦しているようです。
・「旋律の口ずさみをさせたり、自由な身体反応をさせたりして、楽しく聴かせる」 (プロコフィエフ:《出発》、小1)
・「旋律の口ずさみをさせたり、自由な身体表現をさせたりしながら聴かせる。」 (アンダーソン:《ワルツィング・キャット》:小1)
・「旋律の口ずさみをさせたり、自由な身体反応をさせたりしながら聴かせる」 (ゴセック:《ガヴォット》、小1)
・「拍子をとらせたり、自由な身体反応をさせたりしながら聴かせる。」 (イエッセル:《おもちゃの兵隊》、小1)
・「主な旋律を覚えさせ、旋律の口ずさみをさせながら聴かせる。」 (ヨナーソン:《かっこうワルツ》、小2)
・「身体反応をさせながら楽しく聴かせる。」(サン=サーンス:《動物の謝肉祭》から<象>、小2)
・「主な旋律を覚えさせ、旋律の口ずさみをさせながら聴かせる」 (ベートーヴェン:《トルコ行進曲》、小2)
・「自由に身体反応をさせる」 (ハチャトゥリアン:《ガイーヌ》より<剣の舞い>、小2)
・「旋律の口ずさみをさせながら楽しく聴かせる」「自由な身体反応をさせながら聴かせ、3拍子感を体得させる」 (ヘンデル:歌劇《アルチーナ》から<メヌエット>、小2)
・「旋律の口ずさみをさせながら楽しく聴かせる」 (ベートーヴェン:メヌエット ト長調、小3)
・「旋律の口ずさみをさせながら楽しく聴かせる」 (バッハ:管弦楽組曲第2番より<ポロネーズ>、小3)
・「旋律の… (打つのが面倒になりました)」 (スッペ:喜歌劇《軽騎兵》序曲、小3)
面白いのは3年生になると「身体表現」という言葉がなくなるということです。おそらく「発達段階」の理論やらに合わせたものなのでしょうけれど (?)、3年までは「口ずさみ」がずっとおススメのようです。インストゥルメンタル・ナンバーを口ずさむと、どういう効果があるんでしょう。歌が音楽の中心だから、歌えば自然に器楽曲にも親しめるということなのかなあ。
「身体運動」って低学年のキータームになってるようですけれど、冷静に考えると、レコードを流すだけっってことになりませんかね。何か特定の体の動きと音楽とが関係があるのでしょうか。2拍子系と3拍子系の違い、速さの違いというのはあるかもしれないですね。もっともそれならケチャやっちゃうとか、ラヴェルの《ボレロ》の一部をやるとか (ベジャールのDVDは小学生には「コワい」と思われるかな?) 、デイヴ・ブルーベックの《テイク・ファイヴ》やるとか、ジャンルを広げる可能性もあるでしょうね。
もちろん各楽曲には、他にもポイントとしてあがっているものがありますが、「口ずさみ」「身体運動」は、観賞活動において必ず行うような内容になっているように見受けられます。
もしかすると、今は「共通教材」もないですし、こういう「指導資料」に書かれていることも、変わってしまっているのかもしれません。一度覗いてみたいです。
投稿者 amekura101 : 2006年7月 9日 07:16
コメント
とても面白いです。
「口ずさみ」は、鑑賞教育ではなかなか支持されていた指導方法です。「旋律」という西洋特有の「音楽の三大要素」の理解、記憶、習得につながるという心理学的な根拠のもと一般的に行われていたようです。今もそうですね。
それにしても私は音源を持っていないので本当に羨ましいです~。
音楽を「低次元」と括ってしまうこととか、「描写対絶対」と分けることとか、「形式」に妙にこだわるところとか、日本の音楽教育界に独特のことだと思います。そう、正直言ってそれが子どもたちに与える影響って多分ないですよね。
それは教える側のプライド有り、「芸術」信仰あり、音楽の持つ「教育」と「芸術」の側面の対立が、鑑賞領域には顕著で面白いです。
投稿者 ちぴ : 2006年7月 9日 12:29