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2006年2月 6日
ポピュラー音楽って? [若干訂正]
とある高校の音楽の教科書に書いてあった説明が何とも面白かったなあ。ポピュラー音楽は
・体にダイレクトに訴えかけてくるビート感
・刺激的なサウンド
・強烈なメッセージ
・ファッション性
が特徴で、クラシックは「音自体の持つ美しさや、旋律や和声の味わいによって、人間の内なる精神や美的感覚に訴えるもの」なんだそうです。へ~え。どこかの掲示板にでも書けば大変な議論を巻き起こしそうな説明です。
中村とうようさんの『大衆音楽の真実』ですと (p. 21)
ポピュラー音楽は、大衆音楽もしくは通俗音楽ともいう。一般にクラシック音楽と対比して考えられる概念であって、クラシックは規模が大きくて変化に富んだ表現様式を備え、高度の精神性を内包するものとされているのに対して、ポピュラー音楽は、民衆の日常生活の中にある喜怒哀楽の情をストレートに表出する娯楽性の強い音楽であり、その享受のされ方も日常生活に密着している。
これもまた議論を呼びそうですが、「対比」という箇所はちょっと注目できるかなっという感じがしました。
つい気になって、Grove Music OnlineのPopular Musicの項目のうち、定義の部分を読みました。
A term used widely in everyday discourse, generally to refer to types of music that are considered to be of lower value and complexity than art music, and to be readily accessible to large numbers of musically uneducated listeners rather than to an elite.
出典 : Richard Middleton, "Popular music," Grove Music Online (Accessed 06 February 2006), http://www.grovemusic.com/shared/views/article.html?section=music.43179.
「日常のディスコースで広く使われる用語で、芸術音楽よりも価値が低く複雑でないと考えられ、エリートよりも大人数の専門的音楽知識のないリスナーに手早く近付きやすくなっていると考えられているタイプの音楽を一般的に指す」ったところでしょうか。"Considered to be"という一節を入れているのはウマいなあ。
これ以下の議論もちょっと読んだのですが、結局ポピュラー音楽を音楽様式から定義するというのは不可能なのでしょうか。ポピュラー音楽は「世間一般に低いとみなされている、単純と考えられている」ような音楽で、そういった「高い・低い」といった階層性はいろんな社会環境の中で誕生した。そしてこの音楽は常に、他に想像される音楽ジャンルと対立融合しながら歴史的に様々な意味を持ってきたのである、ということか。う~ん。じゃあ一体全体それは何? ってな感じになりそう。ま、「音楽って何?」ってところからして、誰も答えを出していないから (と、ここで思考停止 (^_^;; ) 。
投稿者 amekura101 : 2006年2月 6日 16:11
コメント
答えは音楽自体にはなく、どのような形で消費されているかにあるのでは。「ポピュラー音楽」という概念自体、レコードの普及以前には存在しなかったはずですし。
投稿者 のの : 2006年2月 6日 22:55
グローヴを読んでますと、音楽の普及方法からポピュラー音楽にアプローチする方法があって、特にマス・メディアの発展と役割に関連付けられてきたとあります。この考え方の問題は、生演奏で聴衆に向けられて演奏された場合でもポピュラー音楽というのが消えるわけではないし、家庭でつま弾くこともあるんだし、そもそも民謡だって前衛音楽だってメディアを通すじゃないか、ということだそうです。
消費ということに焦点を置きますと、そもそも安い楽譜が大量生産され消費されたことにもさかのぼり、18世紀後半から19世紀後半にまで到達するそうですね。で、この音楽事典の場合は、その18世紀後半がポピュラー音楽と今日呼んでいるものが概念 (resonancesという言葉が使われておりまして、これは訳しにくいなあ) として生まれた時代で、浸透したのが19世紀という考え方をしているようです。
で、手元にあるPeter GammondのThe Oxford Companion to Popular Musicのポピュラー音楽の項目を見てみますと、「ポピュラー」という言葉が一般の人々の嗜好や手段を理解するために使われ始めたのは、オックスフォード辞典 (OEDのこと?) によると、1573年頃になるんだそうです。音楽書のタイトルとして現れたのは1855年のChappell's Popular Music of the Olden Timesが最初の例のようです (あれ、これのDover復刻版、持ってなかったかなあ?) 。ただ沢山の出版物に「ポピュラー音楽」という言葉が現れるようになったのは1930年代・40年代だそうで、この時代までのギャップがあるとされています。30・40年代が区切りだとすると、やはりメディアによる音楽の普及というのが一つの鍵になることは間違いなさそうですけどね。
投稿者 amekura101 : 2006年2月 6日 23:50
「芸術音楽」の側が、差別化のために「ポピュラー音楽」という蔑称を使うことは古くからあっただろうと想像します。しかしそれが、「ポピュラー音楽」の側からの肯定的な自称として広く使われるには、「芸術音楽」がメディアに乗る(そして、「お高く留まった糞音楽」という感情を抱かせる)のを待つ必要があったのでは。
投稿者 のの : 2006年2月 9日 08:32
30・40年代の本を読むことがあったんですが、当時のジャズが「若者」から絶大な支持を得ているといった趣旨のことが書いてあったように記憶しています。若者層の支持というということであれば、ラジオを通していつの間にか黒人が開拓をし始めていたロックンロールという音楽を好き好んでそれが普及したということがあるわけで、おそらくジャズの場合もラジオの影響があったんではないかと考えられます。レコードもありましたが、高価でしたからね (ロックの時代はドーナツ盤がお小遣いで買えたでしょうけれど) 。
当時生まれたジャズという音楽のスタイルが、それまでのものと大きく違っていたこともあるのでしょうね。フォスターの歌曲なら大人も子供も楽譜を見ながら楽しく共存できる。ところがジャズの出始めのころは、やはり世代による認識の差がある。ポール・ホワイトマンのようなダンス・バンドが「ジャズ王」として君臨した頃になると、それでもマジョリティー層にウケるようになったんでしょうけれど。
「『お高く留まった糞音楽』という感情」がどのくらいあったのかというのは調査してみると面白いかもしれません。私のやった調査はクラシック中心ということもあって、クラシックがいかにメディアによって広く受け入れられたか、というようなことばかり書いてある資料ばかりでしたから。エスタブリッシュメント外のメディアにどういうものがあるのかを見る必要がありそうですね。
投稿者 amekura101 : 2006年2月10日 07:35